はじめに
近年、紫外線対策として注目を集めている「飲む日焼け止め」。その効果や安全性について関心が高まる中、これらの製品が「サプリメント」なのか「医薬品」なのか、その分類や違いについて正確な情報を知ることは重要です。本記事では、飲む日焼け止めの分類とその違いについて詳しく解説します。
飲む日焼け止めとは?
「飲む日焼け止め」とは、紫外線による肌への影響を内側から防ぐことを目的とした製品です。主にカプセルや錠剤の形で提供され、抗酸化作用のある成分や植物由来の成分が含まれています。これらの成分が体内で作用し、紫外線によるダメージを軽減するとされています。fancl.co.jp
サプリメントと医薬品の違い
「飲む日焼け止め」がサプリメントなのか医薬品なのかを理解するためには、両者の違いを明確にする必要があります。
サプリメント(健康食品)
- 目的: 健康の維持や栄養補助を目的とする。
- 規制: 食品衛生法や健康増進法の対象。
- 表示: 「日焼けを防ぐ」などの効能効果を謳うことはできない。
- 販売: 一般の食品として販売され、医師の処方は不要。maclogi.co.jp+1info.bentenmarket.com+1
医薬品
- 目的: 疾病の治療や予防を目的とする。
- 規制: 医薬品医療機器等法(薬機法)の対象。
- 表示: 効能効果を明確に表示できるが、厚生労働省の承認が必要。
- 販売: 医師の処方が必要なものと、一般用医薬品として販売されるものがある。info.bentenmarket.com+2beaker.media+2maclogi.co.jp+2
このように、サプリメントと医薬品では目的や規制、表示方法が大きく異なります。
飲む日焼け止めの分類

現在、日本で販売されている「飲む日焼け止め」の多くはサプリメントとして分類されています。これらは、紫外線対策をサポートする成分を含んでいますが、医薬品としての効能効果を謳うことはできません。一方、医薬品として承認された「飲む日焼け止め」は存在せず、医師の処方が必要な製品もありません。
表示と広告の規制
サプリメントとして販売される「飲む日焼け止め」は、薬機法により効能効果を謳うことができません。例えば、「日焼けを防ぐ」「紫外線をカットする」といった表現は、医薬品でなければ使用できません。そのため、サプリメントでは「美容をサポート」「透明感のある肌へ」といった表現が用いられます。maclogi.co.jp+1beaker.media+1info.bentenmarket.com+1maclogi.co.jp+1
また、広告においても誇大表現や誤解を招く表現は規制されています。消費者庁や厚生労働省は、適切な表示と広告を行うよう指導しています。
成分とその効果
「飲む日焼け止め」に含まれる主な成分には、以下のようなものがあります。
- ポリポディウム・レウコトモス抽出物: 抗酸化作用があり、紫外線による肌のダメージを軽減するとされています。
- アスタキサンチン: 強力な抗酸化作用を持ち、肌の健康をサポートします。
- ビタミンC・E: 抗酸化作用があり、肌の老化防止に寄与します。
これらの成分は、紫外線による肌のダメージを内側からサポートすることが期待されていますが、医薬品のような明確な効果があるわけではありません。
安全性と使用上の注意

サプリメントとしての「飲む日焼け止め」は、一般的に安全性が高いとされていますが、以下の点に注意が必要です。
- 過剰摂取: 推奨される摂取量を守ることが重要です。
- アレルギー: 成分に対するアレルギーがある場合は使用を避ける。
- 妊娠・授乳中: 医師に相談の上、使用を検討する。
また、医薬品との併用についても注意が必要です。特定の成分が医薬品の効果に影響を与える可能性があるため、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。fancl.co.jp
研究とエビデンス
「飲む日焼け止め」の効果については、いくつかの研究が行われています。例えば、ポリポディウム・レウコトモス抽出物の紫外線防御効果についての研究があります。
- 参考文献: Gonzalez S, et al. "Polypodium leucotomos extract: a nutraceutical with photoprotective properties." Photochem Photobiol Sci. 2010;9(4):559-63.
ただし、これらの研究は限定的であり、すべての人に効果があるとは限りません。また、サプリメントとしての効果は医薬品と比較して限定的であることを理解する必要があります。
法的な位置づけと規制
日本において、「飲む日焼け止め」は医薬品として承認されていないため、医薬品としての効能効果を謳うことはできません。薬機法により、医薬品でない製品が医薬品のような効能効果を表示・広告することは禁止されています。違反した場合、行政指導や罰則の対象となる可能性があります。
消費者へのアドバイス

「飲む日焼け止め」を使用する際は、以下の点に留意してください。
- 製品の表示を確認: 効能効果を謳っていないか確認する。
- 成分を確認: アレルギーや体質に合わない成分が含まれていないか確認する。
- 医師や薬剤師に相談: 不安がある場合は専門家に相談する。
また、紫外線対策としては、日焼け止めクリームや衣類、帽子などの物理的な対策も併用することが効果的です。
海外ではどう扱われている?飲む日焼け止めの法的分類と規制の違い
「飲む日焼け止め」というカテゴリーは、近年日本国内だけでなく、アメリカや欧州、アジア諸国でも注目を集めています。しかし、各国における法的な取り扱いや規制は一様ではなく、同じ成分を含む製品でも、その分類や販売方法、広告表現の許可範囲には大きな違いが存在します。グローバルな視点で飲む日焼け止めを理解することは、信頼できる製品選びや適切な使用の指針にもつながります。
アメリカ(USA):FDAのスタンスとマーケティングの自由度
アメリカにおいて「飲む日焼け止め」は、**サプリメント(dietary supplements)**として分類されており、**食品医薬品局(FDA)**の事前承認なしに市場に出ることが可能です。ただし、「日焼け防止」や「紫外線から肌を守る」といった効能効果を謳うことは、医薬品とみなされる可能性があるため、表現には慎重さが求められます。
FDAは2018年、「Sun protection claims are not approved for oral supplements」という声明を出し、飲む日焼け止めとして販売されていた製品(例:UVO、Sunsafe Rxなど)に対して警告を出しました(参考:FDA公式警告)。この通達により、アメリカ国内では「日焼け止めサプリメント」という名称自体が注意深く扱われるようになり、「肌の健康をサポート」「紫外線環境への備え」といった間接表現に留まるのが一般的です。
一方で、アメリカ市場では機能性成分(例:ポリポディウム・レウコトモス、アスタキサンチン)の臨床研究が積極的に行われており、科学的根拠のある「ナチュラル・フォトプロテクション(自然由来の紫外線対策)」というカテゴリーでの展開が主流になりつつあります。
ヨーロッパ(EU諸国):成分の審査と機能性表示の制度化

欧州連合(EU)においては、サプリメントや植物由来製品に対して**European Food Safety Authority(EFSA)**が機能性表示の承認を行う制度があります。飲む日焼け止めに使われる成分の多くも、EFSAの審査対象となっており、安全性と有効性のエビデンスが求められます。
たとえば、アスタキサンチンやビタミンE、Cの抗酸化作用に関してはEFSAによる許可済みの健康強調表示(health claims)が存在する一方で、「紫外線防止」などの表示は医薬品扱いとなるため不可です。EUでは、「抗酸化サポート」「肌の酸化ダメージからの保護」などの文言で展開されるケースが多く、法的制限はありながらも比較的論理的な表示設計が可能な市場といえます。
また、天然由来の成分を活用した栄養補助食品が広く普及している欧州市場では、ポリポディウム・レウコトモスやレスベラトロールといった植物エキスがメンタルヘルスやスキンケア分野でも積極的に応用されており、消費者のリテラシーも高い傾向があります。
オーストラリア:TGAによる厳格な分類と承認制度
オーストラリアは、**Therapeutic Goods Administration(TGA)**によって医薬品および補完・代替医療製品の規制が厳しく管理されています。サプリメントとしての「飲む日焼け止め」を製品化・販売するには、**登録製品(Registered)またはリステッド製品(Listed)**としてTGAの審査を受けなければなりません。
この制度では、製品の成分、安全性、表示文言、広告の内容までが明確に規定されており、日焼け止め効果を謳う場合は「医薬品的効能」として取り扱われます。そのため、オーストラリアで販売されている多くの製品は「紫外線による酸化ストレスから肌を守る」などのサポート的表現を採用しており、臨床的根拠のあるエビデンスをもとに慎重に設計されています。
TGAは、成分に関する科学的データベース「eBS(Electronic Business Services)」を運用しており、成分安全性の透明性が高い点も特徴です。
韓国・台湾・東南アジア諸国:美容志向と法規制の交錯

韓国や台湾、シンガポールなどのアジア諸国でも、飲む日焼け止めは「美容サプリメント」として高い関心を集めています。これらの国々では、医薬品と食品の中間に位置する「機能性食品」や「健康機能食品」としての登録制度が存在し、比較的自由な表示が許可されています。
たとえば、韓国の「健康機能食品法」では、「肌の健康を維持」「抗酸化作用」などの表現が承認されており、飲む日焼け止めの機能性を消費者に伝えるための仕組みが制度化されています。ただし、医薬品的効能を過度に主張した場合は薬事法違反となるリスクがあるため、各国の法的表現ガイドラインを遵守する必要があります。
また、アジア圏では美容やホワイトニング効果を期待して飲む日焼け止めを選ぶ消費者が多いため、製品にはグルタチオンやL-システインといった美白系成分が配合されることも少なくありません。
国際的な比較から見える飲む日焼け止めの分類の課題
こうした各国の違いを整理すると、「飲む日焼け止め」は国ごとに以下のようなグラデーションで取り扱われていることが分かります:
国・地域 | 分類 | 表示可能な効能 | 規制の特徴 |
日本 | 健康食品・サプリメント | 効果表示不可 | 薬機法により医薬品的効能を示す表現は禁止 |
アメリカ | サプリメント | 日焼け防止は不可 | FDAが未承認成分に対し警告、表現に制限あり |
EU諸国 | サプリメント | 抗酸化・肌サポート | EFSAによる健康強調表示のルールに従う必要あり |
オーストラリア | 医薬品またはListed製品 | 制限付き | TGAによる厳格な分類と広告審査 |
韓国・台湾・東南アジア | 機能性食品 | 肌の健康、抗酸化など | 比較的自由な表示可。ただし医薬品的表現はNG |
日本における「飲む日焼け止め」分類の変遷と制度的課題
日本では「飲む日焼け止め」は医薬品ではなく、健康食品・サプリメントとして流通しています。しかしこの背景には、薬機法(旧薬事法)の枠組みと、健康食品の表示制度における微妙なグレーゾーンが影響しています。特に近年、広告表現をめぐる行政指導やガイドラインの強化が進められており、消費者・事業者ともに「制度的な見直し」が求められる局面に来ています。
以下では、日本国内における制度的な背景、歴史的経緯、実務上の課題、そして今後の規制動向について詳述します。
健康食品・サプリメントの制度的枠組み

日本において健康食品の分類は医薬品とは明確に異なり、あくまでも食品としての取り扱いが基本です。そのため、病気の予防や治療、症状の改善などを目的とする効果効能の表示は一切禁止されています。飲む日焼け止めが「紫外線から肌を守る」「日焼けを防ぐ」といった医薬品的な表示を行うことは違法となります。
代わりに用いられるのが、「健康の維持」「美容をサポート」「透明感のある毎日へ」といった機能の暗示にとどめた広告表現です。これは消費者庁と厚生労働省が連携して示すガイドラインに準拠しており、企業は自主的な広告審査や外部監修を導入しながら運用しています。
かつての誤認表示と行政指導の事例
2016年以降、「飲む日焼け止め」を巡っては、いくつかの事業者が薬機法違反として行政指導を受けた事例が報告されています。特に、「飲むだけで日焼けを防ぐ」「塗る日焼け止めは不要になる」といった誇大表現は、消費者の誤認を招くものとして指摘され、景品表示法や健康増進法の観点からも問題視されました。
このような経緯を受け、現在ではメーカー・販売者は表示内容を非常に慎重に設計しています。「紫外線環境下でも自分らしく」「美容と健康を内側からサポート」といった表現が主流となり、直接的な「日焼け防止」という効能表示を避ける工夫が見られます。
医薬部外品との混同と消費者の理解不足
「飲む日焼け止め」はサプリメントであり、医薬品でも医薬部外品でもありません。しかし、消費者の中には「薬ではないが、何かしらの効果を期待できるもの=医薬部外品」として混同するケースも多く、製品選びにおいて誤解を招きやすい構造となっています。
医薬部外品は厚生労働省によって認可された一定の効能を持つ製品(例:美白化粧品、育毛剤など)であり、その中で紫外線対策に該当するのは「外用」の日焼け止めのみです。経口摂取型の紫外線対策製品が医薬部外品に分類された前例はありません。
この点において、消費者教育がまだ十分に行き届いていないという課題が浮かび上がります。
機能性表示食品への期待とハードル

2015年より導入された「機能性表示食品」制度は、事業者が科学的根拠に基づく表示を行える仕組みとして注目されています。たとえば、「本品に含まれるアスタキサンチンは肌の健康を保つ機能があります」といった表示が、届出とエビデンスをもとに許可される仕組みです。
ただし、**紫外線防止という明確なアウトカムに関しては、現状の制度では認められていません。**抗酸化作用や肌の保湿維持など間接的な表現での機能性表示に限られており、「飲む日焼け止め」の成分が機能性表示食品として認可されるには、さらなる研究と制度整備が必要です。
また、機能性表示食品として届け出る場合、ヒト試験または文献レビューによる科学的根拠が求められるため、企業にとっては費用・労力ともに高いハードルとなっています。
今後の法制度改正の見通し
近年では、「ヘルスケア製品のエビデンス評価を強化すべき」との議論が国会や行政審議会でも活発化しており、健康食品の取り扱い全般に対する見直しが進められています。飲む日焼け止めもその流れの中にあり、次のような法制度の整備が期待されています:
- 広告規制の明文化:医薬品的な表現の具体的な基準がより明確に示される見込み
- エビデンスベースの認可制度:成分別に機能性を認定する評価制度の整備
- 医薬部外品への橋渡し制度:内服製品にも限定的に効能を認可する可能性の検討
さらに、国民の健康リテラシー向上や、美容医療とヘルスケアの境界をどう扱うかという議論も今後の方向性を左右する要素です。
グローバル市場との整合性への課題
日本の薬機法は世界的に見ても非常に厳格であり、欧米やアジア諸国と比べると表示規制が強く、自由度が低いと指摘されています。そのため、海外市場で「サンケア機能がある」として販売されている製品が、日本では同じ文言を使えず、ブランディングや輸入販売に苦労するケースも増加しています。
また、国際的なエビデンスをもとに機能性を認可するグローバルな基準がまだ存在せず、各国で制度がバラバラであることも課題です。将来的には、ISO規格や国際機関による成分評価の枠組みが導入されることで、輸出入と規制対応の整合性が高まることが期待されています。
成分別に見る日本での表示制限と薬機法の注意点

飲む日焼け止めとして販売される多くの製品は、「肌の健康」や「抗酸化作用」を訴求するために、特定の成分を配合しています。しかし日本では、これらの成分が医薬品成分として指定されていないかどうか、また医薬的な効能効果を連想させる表現を使っていないかが厳しく問われます。以下に、よく用いられる代表的な成分と、それぞれの注意点を紹介します。
ポリポディウム・レウコトモス(Polypodium leucotomos)
シダ植物由来の抗酸化成分で、紫外線による炎症やDNA損傷の抑制が報告されています。アメリカでは「natural photoprotection」として機能性が強調されますが、日本では「紫外線防御」「日焼け防止」といった直接的な表現は薬機法上NGです。表現例としては「紫外線環境に着目した美容成分」「透明感ある毎日へ」といった、間接的な表現に留める必要があります。
アスタキサンチン
サケやエビに含まれる赤色色素で、強力な抗酸化作用があります。機能性表示食品制度では「目のピント調節機能」「肌の潤い維持」といった表現で受理された事例もありますが、「紫外線カット」や「日焼け対策」という表現は不可です。肌機能との関連を示す場合も、「サポート」や「助ける」などの婉曲表現が推奨されます。
ビタミンC・ビタミンE
抗酸化作用が一般によく知られたビタミンですが、特にビタミンCは「美白」や「メラニン抑制」といった表現が医薬部外品では許可されているため、サプリメントで同様の表現を用いると薬機法違反と判断される可能性があります。あくまで「健康維持をサポート」「肌のコンディションを保つ」といった範囲にとどめるべきです。
L-システイン、グルタチオン
美白やメラニン代謝に関係する成分として注目されるL-システインやグルタチオンも、薬機法では医薬品成分に該当します。特にL-システインは、しみ・そばかす予防の医薬品(市販薬)に配合されているため、サプリメントでこの成分を使う場合は**「美白」「しみ対策」などの訴求は禁止される**ことになります。
消費者が気をつけたい「飲む日焼け止め」選びのポイント
飲む日焼け止めを選ぶ際、成分や価格だけでなく、表示内容や販売元の信頼性にも注目することが重要です。まず、パッケージや広告に「日焼けを防ぐ」「紫外線をカットする」などの医薬品的な表現が使われていないか確認しましょう。これらは薬機法違反に該当する可能性があり、法令順守の姿勢が甘い事業者のリスクサインともなります。
また、製品に配合されている成分が、どのような科学的根拠に基づいているか、第三者評価や研究データの有無もチェックポイントです。安全性や品質への信頼性を高めるには、GMP認証、機能性表示食品の届出状況、企業の情報開示姿勢を参考にするとよいでしょう。
まとめ
飲む日焼け止めは日本では医薬品ではなくサプリメントとして分類されており、「日焼け防止」「紫外線カット」などの効能効果を表示・広告に用いることは、薬機法上認められていません。国や地域によって制度や分類が異なり、アメリカやEU、韓国などでは一定の範囲で機能性表示が許可されている一方、日本では非常に慎重な運用が求められます。成分ごとに表示制限があることや、医薬品成分との混同リスク、機能性表示食品制度の利用可能性、そして消費者が誤認しないための表示設計など、多くの視点から制度的な整備が急務です。今後は国際的な整合性と国内消費者保護の両立を図るためのガイドライン強化と、情報発信の透明性が求められるでしょう。