サプリメントをご使用になる前に、大切なお願いです
ドクトルホワイトパラソル(ニュートロックスサン®
含有)には、グレープフルーツエキスが含まれています。
グレープフルーツに含まれる天然の成分(例:6′,7′-ジヒドロキシベルガモッテンやナリンギン)は、特定のお薬の働きに影響を与えることが知られています。抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、その他の重要な薬剤と相互作用を起こす可能性があります。
こうした成分は、果実そのものやジュース、抽出エキスにも含まれており、製品の形にかかわらず注意が必要です。ある研究では、果肉のほうがジュースよりも相互作用を引き起こす成分の量が多い可能性があることも示唆されています。
エキスにおいても、製造方法や濃縮度によって作用の強さが異なることがあります。
特に、妊娠中・授乳中の方、または持病でお薬を継続して服用されている方は、ご使用前に必ず医師や薬剤師にご相談ください。
皆さまの安全と健康を第一にお考えいただき、慎重なご判断をお願いいたします。
なお、グレープフルーツ以外にも、りんご、オレンジ、ザクロ、レモン、ぶどう、ライム、ポメロ、小麦若葉などの果物やジュースが、一部の薬に影響を及ぼす可能性があるという研究報告もあります。
ただし、これらの果物に関する知見はまだ限られており、相互作用の強さや影響の広がりについてはグレープフルーツほど明確に分かっていないのが現状です。
あくまで正しい判断のための補足情報として、参考になさってください。
どうか、ご自身とご家族の健康のために、情報に基づいたご判断をなさってください。
はじめに:グレープフルーツの二面性について
グレープフルーツ(Citrus paradisi
Macf./シトラス・パラディシ・マック)は、バルバドスで生まれたブンタン(文旦)とスイートオレンジ(甘橙)の自然交配によって生まれた柑橘類の果物です。
低カロリーで、ビタミンCや食物繊維を豊富に含むことから、アメリカ心臓協会(American
Heart Association)など多くの健康団体に推奨されています。
しかし、グレープフルーツは単なる健康食品ではありません。
実は、この果物には薬の体内での動きを変えてしまう生理活性成分(bioactive
compounds)が含まれており、それが治療効果を弱めたり、逆に副作用を強めてしまうことがあります。
そのため、グレープフルーツと薬の相互作用(drug
interaction)の仕組みや、その臨床上の影響を理解することがとても重要です。
薬との相互作用を引き起こす主要成分
グレープフルーツに含まれる成分のうち、薬との相互作用に関わる主な物質は以下の2つの分類に分けられます。
フラノクマリン類(Furanocoumarins)
例:6′,7′-ジヒドロキシベルガモッティン(6′,7′-dihydroxybergamottin)、ベルガモッティン(bergamottin)
→ 小腸にある薬物代謝酵素 CYP3A4 を不可逆的に阻害します。フラボノイド類(Flavonoids)
例:ナリンギン(naringin)、ナリンゲニン(naringenin)
→ 小腸にある薬物輸送たんぱく質、特に OATP(有機アニオントランスポーター:Organic Anion Transporting Polypeptides)を阻害し、薬の吸収を低下させることがあります。
また、P-糖タンパク質(P-glycoprotein/P-gp) にも影響を与える可能性があります。
グレープフルーツと薬の相互作用の仕組み
1. 小腸CYP3A4の阻害
CYP3A4
は、経口薬(飲み薬)が体内に吸収される前に小腸の中で代謝(分解)する働きを持ちます。
グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類はこの酵素を不可逆的(irreversible)に阻害し、薬の体内濃度が通常より高くなり、副作用が起きやすくなります。
この作用は酵素が新しく作られる(de novo
synthesis)まで続くため、24時間以上持続することもあります。
2. 薬物輸送たんぱく質の阻害
OATP(オーエーティーピー)
は、薬を小腸の細胞に取り込むはたらきをします。
これが阻害されると薬の吸収量が減り、血中濃度(薬が血液中にどれくらいあるか)が低下します。
P-gp(P-糖タンパク質) は、薬を腸の外へ排出する働きがありますが、グレープフルーツによる影響は比較的小さく、一定していません。
相互作用の強さに影響を与える要因
グレープフルーツが薬に与える影響は、以下のような要因によって変わります。
- グレープフルーツ製品の種類(ジュース、抽出物、果実そのもの、皮など)
- 摂取量(量が多いほど影響が強くなる)
- 胃腸内のpH(酸性度)や、薬物輸送たんぱくの働き
- 個人差(CYP3A4やOATPなどの発現量には個人差があります)
ケーススタディ:日本におけるフェキソフェナジン(Fexofenadine)
フェキソフェナジン(Fexofenadine)は、日本で広く使用されている眠くなりにくい抗ヒスタミン薬(non-sedating
antihistamine)です。
市販薬としては、「アレグラFX(Hisamitsu)」や「ノスポール鼻炎錠FX(Matsukiyo)」などの商品名で知られ、アレルギー性鼻炎や慢性じんましん(慢性蕁麻疹)などに用いられます。
この薬は、他の多くの薬と異なり、CYP酵素による代謝をあまり受けません。
代わりに、小腸にある OATP1A2 および
OATP2B1
という輸送たんぱくに依存して体内に吸収されます。
薬物動態のポイント
- バイオアベイラビリティ(Bioavailability:体内利用率):約33%(吸収が悪く、輸送たんぱく依存性が高い)
- 排泄経路:80%以上が未変化のまま便として排泄、12%が尿中へ
- 肝臓での代謝がほとんどないため、OATPによる相互作用に対して非常に影響を受けやすい
実験的証拠:ジュースがフェキソフェナジンに与える影響
細胞実験(In Vitro)
グレープフルーツジュースやその成分(例:6′,7′-ジヒドロキシベルガモッティン)は、フェキソフェナジンのOATPによる吸収を強く阻害することが確認されています。
同様に、リンゴジュースやオレンジジュースもOATP活性を強く抑えます。
P-gpへの影響は限定的で、高濃度や特殊な抽出物が必要です(例:果皮成分)。
ヒト臨床試験(Dresserら, 2002)
10人の健康なボランティアを対象とした無作為交差試験で、グレープフルーツジュースの影響を調査しました。
濃縮100%グレープフルーツジュースを飲んだ場合:
- AUC(血中薬物濃度の合計)が約63%減少
- C_max(最大血中濃度)が約62%減少
- 尿中排泄量も約70%減少
- AUC(血中薬物濃度の合計)が約63%減少
リンゴジュース、オレンジジュースも同様の影響あり
25%に薄めたグレープフルーツジュースでもAUCが約20%減少し、少量でも吸収に影響があることが示されました
臨床的意義(Clinical Implications)
フェキソフェナジンを服用している方へ
フェキソフェナジンを服用する前後4時間は、グレープフルーツ・リンゴ・オレンジジュースの摂取を避けましょう。
吸収が妨げられると、アレルギー症状がうまくコントロールできなくなる可能性があります。
他の薬剤の場合
グレープフルーツ製品は、薬の効果を強めたり、逆に弱めたりすることがあります。
- 血中濃度が減少する薬(=効果が下がる可能性):
- アリスキレン(Aliskiren)
- セリプロロール(Celiprolol)
- クロピドグレル(Clopidogrel)
- エトポシド(Etoposide)
- フェキソフェナジン(Fexofenadine) など
- アリスキレン(Aliskiren)
- 血中濃度が上昇する薬(=副作用リスクが増える可能性):
- アミオダロン
- アトルバスタチン
- カルバマゼピン
- エリスロマイシン
- ニフェジピン
- タクロリムス
- シンバスタチン
- バルプロ酸
- シルデナフィル
- メタドン
- コデイン
- オキシコドン など多数
- アミオダロン
特殊な例
イトラコナゾール(Itraconazole)はグレープフルーツジュースにより相反する影響を受けることが知られていますが、正確な仕組みは未解明です。
注意:このリストはあくまで一部の例にすぎず、すべての影響の程度が示されているわけではありません。
他の薬にも影響が及ぶ可能性がありますので、サプリメントや果物を摂取する場合は、薬の種類や用量を必ず医師や薬剤師に相談してください。
また、経口投与(口から飲む薬)と注射などの経路の違いでも、相互作用の程度が変わることがあります。
まとめと推奨事項
グレープフルーツやリンゴ、オレンジのジュースは、薬の吸収や代謝に大きな影響を与える可能性があります。
この影響は主に以下の2つによって起こります:
CYP3A4の不可逆的阻害
→ 血中薬物濃度の上昇、副作用リスクの増加OATPの可逆的阻害
→ 薬の吸収低下、治療効果の低下
フェキソフェナジンは、OATP阻害による相互作用の代表例です。
ジュースと一緒に摂取すると、最大で70%も血中濃度が低下することが示されています。
これは、特に用量調整が重要な薬剤や、治療域が狭い薬剤においては、非常に重大な問題となります。
推奨事項:
- 薬を服用する前後4時間は、果汁ジュースの摂取を避ける
- 薬を服用中にサプリメントやジュースを摂る場合は、必ず医師や薬剤師に相談する
- 治療効果の低下や副作用の出現に注意を払う
- 製品ラベルや説明書に、薬物輸送たんぱくに関する注意事項を明記するよう推奨する
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